第5章 伏黒恵
【魔法少女】
「…魔法少女?」
「うん。魔法少女になりない」
ロロが真剣な声でそう言うと、伏黒は眉をひそめた。
「熱でもあるのか」
「ない。変身して、キラキラして、悪い奴を倒して、最後に決めポーズ」
伏黒は小さくため息をつく。
「今のロロは、十分似たようなことしてるだろ。呪霊祓ってるし」
「違うの。フリフリの衣装がない」
「そこか」
「恵、変身シーンの相棒役やって!」
「断る」
「一回だけ」
「断る」
それでも諦めないロロは、くるりと回る。
「愛と希望のー」
その瞬間、玉犬が「ワン」と鳴いた。
「ほら!玉犬も応援してる!」
「違う」
「じゃあ、鵺でライトアップ!」
「しない」
「満像で演出!」
「ここが水浸しになる」
冷静に却下され続けても、ロロは負けない。
「じゃあ、最後の決め台詞だけ!」
「…好きにしろ」
「ありがとう!」
ロロは満面の笑みでポーズを決めた。
「皆の笑顔を守る、マジカルー」
「後ろ」
「えっ」
振り向くと、小さな呪霊がこちらを見ていた。それを玉犬で祓う。
「…変身中に襲われたら終わりだぞ」
「現実は厳しい」
「だから俺がいる」
何気なく言ったその一言に、ロロは固まる。
「変身が終わるまでくらいは守ってやる」
伏黒は照れ隠しのように、視線を逸らした。
「ただし、フリフリ衣装は絶対着ない」
「そこは譲らないんだ」
「当たり前だ」
思わず笑うロロにつられて、伏黒もほんの少しだけ口元を緩めた。
「魔法少女じゃなくてもロロは十分、人を助けられる
」
その言葉の方が、どんな魔法より胸を温かくした。