第5章 伏黒恵
【空気椅子】
「体幹が弱い」
任務終わりの、高専の訓練場。伏黒はそう言うと、ロロの前に腕を組んで立っていた。
「空気椅子、3分」
「はぁ!?3分!?」
「文句言うなら5分」
「言いません!」
渋々、壁に背中をつけて腰を落とすロロ。
「うぅ…太ももが…」
開始1分。プルプル震え始めた足を見て、伏黒は時計を確認するだけだった。
「まだ2分ある」
「鬼…!」
「呪術師だ」
「そういう問題じゃない!」
近くで虎杖が「頑張れー!」と笑い、釘崎は「伏黒、容赦なさすぎ」と呆れている。ロロは涙目になりながら必死に耐えた。
「もう無理!」
「あと30秒」
「嘘でしょ!?」
「本当だ」
その声は淡々としているのに、ロロが倒れそうになると、伏黒はすぐ腕を伸ばして支えた。
「背中が浮いている」
「…優しいのか厳しいのか分かんない」
「どっちでもいい。怪我される方が面倒だ」
その一言に、ロロは思わず笑う。
「それ、心配してるってこと?」
「…好きに解釈しろ」
耳だけが少し赤い。
「時間だ」
その言葉と同時にロロは床へ座り込んだ。
「もう歩けない…」
伏黒は小さくため息をつくと、ロロの前にしゃがむ。
「…乗れ」
「え?」
「部屋まで送る」
「え、でも」
「足、笑ってるだろ」
照れ隠しのように前を向いたまま言う伏黒に、ロロはそっと掴まった。
「…ありがと、恵」
「次は5分な」
「やっぱ降りる!」
その叫びに、珍しく伏黒は小さく笑った。