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短編

第4章 釘崎野薔薇


【誕生日】※男主


「誕生日おめでとう、野薔薇」

日付が変わった瞬間、虎太郎の声が静かな廊下に響いた。

「…え」

部屋を出た釘崎は、思わず目を瞬かせる。虎太郎は小さな箱と花束を抱え、少し照れたように笑っていた。

「誰よりも先に言いたかった」

その一言に、釘崎の胸がどくりと高鳴る。

「…虎太郎、そういうの反則」

強気に笑おうとしても、頬が熱くなってしまう。

「開けてもいい?」

「もちろん」

箱の中には、釘崎が以前ショーウィンドウの前で、かわいいと見つめていたネックレス。

「覚えてたの?」

「野薔薇のことだから」

その答えが嬉しくて、釘崎は思わず笑みをこぼした。

「つけてあげる」

虎太郎が背中へ回る。指先が首筋をかすめるたび、くすぐったさと恥ずかしさで肩が震える。

「はい、できた」

「…似合う?」

「すごく」

迷いのない返事に、釘崎は照れ隠しで虎太郎の肩を軽く叩く。

「そんな真っすぐ言われると調子狂うじゃない」

「本当のことだから」

虎太郎は優しく微笑み、そのまま釘崎の手を取った。

「今日は一日、俺が野薔薇を笑顔にする」

「へぇ?」

「美味しいものを食べて、欲しいものを見て、最後まで一緒に過ごしたい」

釘崎は少し黙り込む。やがて、照れたように笑った。

「…そんな誕生日、悪くないわね」

指を絡めると、虎太郎はそっと握り返す。

「来年も、その次も祝わせて」

「もちろん」

釘崎は一歩近づき、肩を軽く預けた。

「来年だけじゃ足りないわ。毎年、毎年、ちゃんと一番最初に『おめでとう』って言って」

虎太郎は優しくうなずく。

「約束」

釘崎は満足そうに笑い、その手をぎゅっと握り返した。

「じゃあ今年の誕生日は、虎太郎を独り占めね」

そう宣言した釘崎の笑顔は、どんなプレゼントよりも眩しく輝いていた。
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