第4章 釘崎野薔薇
【ハッピーエンド】※男主
「ねぇ、虎太郎さ」
夕焼け色の教室で、釘崎は机に頬杖をついた。
「もし世界が明日終わるって言われたら、どうする?」
突拍子もない質問に、虎太郎は少しだけ考えて笑う。
「野薔薇と一緒にいる」
「…は?」
「最後まで隣にいたいから」
釘崎は照れ隠しに舌打ちをした。
「そういう恥ずかしいこと、サラッと言うなっての」
耳が少し赤い。窓から吹く風が、釘崎の短い髪を揺らした。
「私はね」
ぽつり、と釘崎が言う。
「綺麗な服を着て、美味しいもの食べて、それで最後に笑えたら十分」
「欲張らないんだ?」
「欲張ってるわよ。好きな人と笑って終われるなんて、一番贅沢じゃない」
その言葉に、虎太郎は思わず息をのむ。
「…好きな人って」
「虎太郎以外いる?」
顔を真っ赤にしながらも、釘崎は視線を逸らさない。
「勘違いしないで。告白とか、そういうしおらしいのじゃないから」
「じゃあ何?」
「事実確認」
強気に言い切る釘崎がおかしくて、虎太郎は吹き出した。
「俺も好き」
その一言だけで十分だった。釘崎はため息をつきながら笑う。
「まったく。調子狂うわね」
そう言って、虎太郎の小指に自分の小指を絡めた。
「約束。明日も、その次の日も、生きて帰ってくること」
「うん」
「もし守れなくても」
釘崎は少しだけ寂しそうに笑ってから、すぐにいつもの勝ち気な顔へ戻る。
「最後に好きって言えたなら、後悔はしない」
夕日が2人を金色に染める。虎太郎は彼女の手を少しだけ強く握る。釘崎は照れくさそうに笑って、小さく呟いた。
「…たぶん、これがハッピーエンド」