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短編

第4章 釘崎野薔薇


【わたあめ機】※男主


休日の寮。共有スペースに置かれたわたあめ機を前に、虎太郎は砂糖を流し入れた。

「またやるの?」

呆れたように言いながらも、釘崎は虎太郎の隣へ来る。

「今日は一緒に作ろうよ」

その一言に、釘崎は小さく笑った。

「しょうがないわね」

機械が回り始めると、白い糸がふわりと舞う。1本の棒を2人で持ち、息を合わせてゆっくり回す。

「もう少し左」

「こう?」

「そう、それ」

肩が触れ合うほど近い距離で作業を続けると、真っ白な綿あめが少しずつ大きくなっていった。

「できた!」

「やっと成功ね」

釘崎は嬉しそうに笑い、わたあめを少しちぎる。

「はい」

「俺に?」

「最初の一口」

差し出されたわたあめを口にすると、ふわりと甘さが広がった。

「おいしい」

「でしょ」

今度は虎太郎がわたあめをちぎり、釘崎へ差し出す。

「お返し」

釘崎は少し照れながら口を開く。一口食べ終えると、唇の端に小さな綿あめが残った。

「ついてる」

虎太郎はそっと指で取る。互いの顔が近づき、釘崎は虎太郎を見つめたまま動かない。

「取れた」

「ありがと」

それでも距離は離れない。

「近いわよ」

口ではそう言うのに、釘崎は一歩も下がらなかった。

「嫌?」

尋ねると、釘崎は少しだけ目を細める。

「…嫌だったら、とっくに離れてる」

その言葉が嬉しくて、思わず笑う。

「何笑ってるの」

「かわいいなって」

「ば、ばか」

照れた釘崎は虎太郎の胸を軽く小突く。けれど、その手は離れない。

「もう一個作る?」

虎太郎が聞くと、釘崎は虎太郎の手をそっと握った。

「わたあめは後でいい。今は…このままで」

普段は強気な釘崎らしくない、小さな声。虎太郎が握り返すと、釘崎は照れくさそうに笑う。

「甘いのはわたあめだけで十分だと思ってたけど」

釘崎は虎太郎の肩にもたれ、幸せそうに目を細めた。

「…虎太郎といる方が、もっと甘いわね」
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