第4章 釘崎野薔薇
【スイカ】※男主
夏の暑い日。虎太郎が大きなスイカを抱えて戻ってきた。
「見て。商店街の福引で当たった!」
「はぁ!? あんた運良すぎでしょ」
「冷やしてから食べよう!」
数時間後。冷えたスイカを切ると、真っ赤な果肉が顔をのぞかせた。
「うわ、甘そう!」
釘崎は待ちきれず、一番大きな一切れを手に取る。
「いただきます!」
勢いよくかぶりついた瞬間、果汁がぽたりと顎を伝った。
「ん〜! おいしい!」
夢中で食べる釘崎を見て、虎太郎は思わず笑う。
「何よ、その笑い」
「幸せそうだなって」
「…悪い?」
少し照れたように睨まれ、虎太郎は首を振る。
「全然」
すると釘崎は虎太郎のスイカをちらりと見た。
「一口、ちょうだい」
「え?」
「味見よ、味見」
虎太郎が差し出すと、釘崎はぱくっと一口食べる。
「うん。こっちも甘い」
満足そうに頷いたあと、今度は自分のスイカを差し出した。
「はい。あんたも」
「いいの?」
「減る前に食べなさい」
虎太郎が一口かじると、釘崎は少しだけ頬を赤くした。
「これ、よく考えたら間接キスじゃない?」
照れ隠しに虎太郎の肩を軽く叩く釘崎。虎太郎は笑いながら謝る。
「ごめん」
「…まあ、あんた相手なら今回は特別よ」
そう言って再びスイカにかぶりつく釘崎の耳は、夏の日差しのせいだけではないくらい赤く染まっていた。