第4章 釘崎野薔薇
【薔薇】※男主
任務帰り、商店街を歩く2人。
「今日のあんたの動き、40点」
「厳しくない?」
「呪霊に気を取られて背中ガラ空き。私がフォローしなかったら終わってたわよ」
「…返す言葉もない」
「素直なのはいいけど、次は私に借り作らないで」
虎太郎は苦笑いするしかなかった。
歩いていると、1軒の花屋が目に入る。
「ちょっと待ってて」
「は?ちょっと!」
数分後、虎太郎は1本の赤い薔薇を持って戻ってきた。釘崎は目を細める。
「…誰に?」
「野薔薇に」
「はぁ?」
「今日のお礼」
「ジュース1本で済む話でしょ」
「それじゃ足りない」
虎太郎は照れくさそうに笑った。
「野薔薇が助けてくれた時さ、自分が怪我するより、野薔薇が傷つく方が嫌だって思った」
その一言で、野薔薇の表情が止まる。
「…急にそういうこと言う?」
「今しか言えない気がした」
虎太郎は薔薇を差し出した。
「受け取って」
野薔薇は薔薇と虎太郎を見比べ、大きくため息をつく。
「1本の赤い薔薇の意味、知ってんの?」
「『あなたしかいない』」
「知ってて渡すとか、度胸あるじゃない」
呆れたように笑いながらも、頬はほんのり赤い。
「天然じゃないのが一番タチ悪いわ」
「ごめん」
「謝るな。こっちの調子が狂う」
ぶっきらぼうに薔薇を受け取るが、花びらが傷つかないようにそっと抱える。虎太郎が嬉しそうに笑うと、野薔薇は肩を軽く小突いた。
「その顔やめなさい。勝ったみたいで腹立つ」
少しだけ視線を逸らし、小さく息をつく。
「嫌だったら受け取ってない」
その言葉だけで十分だった。
釘崎は先に歩き出し、数歩先で右手を後ろへ伸ばす。
「ほら」
「え?」
「手くらい繋ぎなさい。いちいち察しが悪いのよ」
虎太郎が手を握ると、釘崎は照れ隠しに鼻を鳴らした。
「勘違いしないで。今日は特別」
そう言いながらも、繋いだ手は最後まで離れなかった。