第3章 両面宿儺
【膝の上】※平安時代の宿儺
午後の陽射しが障子越しにやわらかく差し込む。宿儺は部屋の中央にあぐらをかき、退屈そうに頬杖をついていた。ロロはその前を行ったり来たりしては、何度も宿儺を見てしまう。
「…何だ」
低い声に肩が跳ねる。
「いや、その…」
言葉を濁すロロを見て、宿儺は薄く笑った。
「言いたいことがあるなら言え」
少しだけ勇気を出して口を開く。
「膝の上、座ってもいいですか?」
一瞬の沈黙。やがて宿儺は鼻で笑い、片手で自分の膝を軽く叩いた。
「許す。来い。」
思わず顔がほころぶ。そっと宿儺の膝へ腰を下ろすと、体がぐらりと揺れた。倒れそうになった瞬間、宿儺の腕がロロの腰を支えた。
「危なっかしい奴だ」
「ご、ごめんなさい」
「謝るな」
低く言うと、そのままロロを抱え直す。逃げ場がないほど近い距離に、思わず鼓動が速くなる。
「そんなに緊張するな」
「だって…近いです」
宿儺はくつりと笑う。
「今さらだろう」
大きな手が背中をゆっくりさすり、乱れた呼吸を落ち着かせるように一定の速さで動く。ロロがそっと肩へ寄りかかると、宿儺は何も言わず受け止めた。静かな時間が流れる。風が障子を揺らし、遠くで鳥の鳴き声が聞こえた。
「眠いのか」
「少しだけ」
「なら寝ろ」
「でも重いでしょう」
「その程度で音を上げると思うか」
呆れたように言いながら、宿儺はロロがずり落ちないよう腕に少し力を込める。
「ほら」
促されるまま額を彼の肩へ預けると、宿儺は髪をひと房すくって指先で遊び始めた。
「お前は本当に隙だらけだ」
「宿儺様の前だけですよ」
その答えに、彼の指がぴたりと止まる。数秒後、ふっと小さく笑った。
「そうか」
それ以上は何も言わない。ただ、ロロを抱える腕だけが少しだけ優しくなった。夕暮れまで、2人はそのまま静かな部屋で寄り添って過ごした。