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短編

第1章 五条悟


【ハイヒール】※学生五条


「ねぇ、悟」

ロロが靴箱から取り出したのは、真新しい黒のハイヒールだった。

「3日後の任務先、ドレスコードがあるらしくて」

「へぇ」

高専の中庭。ベンチに寝転んでいた五条が、サングラスを少し下げて眺める。

「だから練習」

そう言って履いてみるものの。

「わっ!」

一歩目からグラリと体が傾く。

「ぶっ!」

五条は吹き出した。

「笑わないで!」

「だって、一歩で終わったじゃん」

「うるさい!」

ロロは頬を膨らませながら、もう一度歩き出す。カツカツ。最初よりは少しだけ上手く歩けた。

「どう?」

「肩に力入れすぎ」

「え?」

「あと下見てる」

「そんなの分かるの?」

「分かる」

五条は立ち上がるど、ロロの前に回った。

「ほら、顔上げて」

顎を軽く指で上げられ、思わず息を飲む。

「前だけ見て歩く」

「…うん」

「背筋伸ばして」

言われた通りにすると。

「そのまま」

ロロはゆっくり歩く。カツカツ。さっきよりずっと自然だった。

「お、いいじゃん」

「本当?」

「うん。でもまだ硬い」

「難しい…」

ため息をつくロロを見て、五条は考える。

「じゃあ、俺につかまって歩いてみ」

そう言って、ロロの前に立ち、右手を差し出した。

「え?」

「転んだら危ないし」

ロロは恐る恐るその手を握る。

「じゃ、行くよ」

2人でゆっくり歩き始める。五条はロロの歩幅に合わせ、いつもよりずっとゆっくり進む。

「今、いい感じ」

「本当に?」

「うん。力抜けてる」

そのまま何周か歩き続けると、ロロは少しずつ慣れてきた。

「1人でも歩けそう」

手を離そうとした瞬間。ヒールが小石に乗り、体が崩れる。

「きゃっ!」

倒れる寸前、五条が腰を支えた。顔を上げると、目の前には楽しそうに笑う五条。

「…悔しい」

「ロロがハイヒールを履きこなせるようになるまで、何回でも付き合ってあげる」

その言葉に、ロロは思わず笑みがこぼした。

「じゃあ、明日も付き合って!」

「もちろん」

夕日に照らされながら、2人はまたゆっくりと歩き始めた。
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