SW異銀河から落ちてきた言葉の通じない謎の親子を保護しました
第3章 居候の始まりとおかしな日常
初めての公園へのお出かけをきっかけに、ディンとグローグーの日本の暮らしへの適応はさらに進んでいった。
ある日、星子が工務店の仕事を終えて帰宅すると、居間のコタツの前に見慣れない光景があった。
ディンが特大の黒いパーカーを羽織ったままコタツに入り、星子のタブレットの画面を大きな手袋の指で器用に滑らせていた。
すでに完璧に操作方法を覚えたらしく、じっと画面の動画(YouTubeやTikTok)をスクロールさせている。
「え、ちょっと待って……?」
星子は玄関でバッグを持ったまま、呆然と固まってしまった。
「いつの間にタブレットなんて使えるようになったの!? っていうか、パスワードロックかかってたはずなんだけど……もしかして、バレてる!?」
星子の困惑に満ちた声を聴き、コタツの布団からひょっこりと緑色の顔を出したグローグーが、「んぅ〜?」と不思議そうに首を傾げた。
その隣で、黒いフードを深く被ったディンは、ヘルメットの奥からじっと星子を見つめ、何事もなかったかのように静かに一度だけヘルメットを縦に振ってみせた。
(嘘でしょ……。私がロックを解除する時の指の動きを、じっと見て覚えてたんだ……。なんて油断も隙もない観察力をしてるの……)
この寡黙な大男の油断のなさを、こんな日常の場面で思い知らされるとは思わなかった。星子は呆れ半分、驚き半分でため息を漏らす。
するとディンは、静かに画面をこちらに向け、ある動画の画面を指さした。
それは雪のちらつく神社の境内に、たくさんの赤提灯やあたたかい湯気を立てる屋台が並ぶ、日本の「初詣の縁日」の映像だった。
グローグーはコタツの布団から身を乗り出し、画面に映るあつあつのたこ焼きや唐揚げを、小さな三本の指で何度も一生懸命に指さした。
大きな真ん丸の黒瞳をうるうると潤ませ、その真ん丸な目を見開いてじっと上目遣いで星子を見つめながら、大きな耳をほんの少しハの字に下げて「ん〜……」と切なげに喉を鳴らす。
どうしてもあれが食べてみたいという、食べ物に対する無敵のおねだりアピールだった。