第1章 夏灯りの約束
「星也さん、大丈夫でしょうか?」
不安そうにする津美紀に、星良は「大丈夫よ」と安心させるよう笑みを浮かべた。
「星也が絶対 来るって言ってるんだもの。もう少し待ちましょ」
星也はできない約束はしない。
だから、遅れたって必ず来るはずだ。
そのとき、慣れた呪力が上空を過った。
「……来たわね」
え、と目を丸くする津美紀に、詞織と伏黒が視線を通わせる。
程なくして、浴衣に着替えた星也が走って来た。
「待たせてすまない」
珍しく肩で荒く息をする星也の頭を、星良はよしよしと撫でてやった。
「よくやったわ。さすが あたしの弟ね」
疲れているのか。されるがままの星也に、伏黒が「お疲れさまです」と声をかける。
「兄さま、怪我してる」
詞織が兄の頬に手を伸ばした。そこには、鋭く裂傷が刻まれている。
「星也さん、大丈夫ですか⁉︎」
オロオロと青い顔をする津美紀に星良は苦笑した。
自分で【反転術式】は掛けたのだろうが、顔までは気づかなかったらしい。
「はいはい。ジッとして」
星良は筆と小さな墨壺を取り出し、星也の頬に【修復】の文字を書く。ポゥと淡い光が生まれ、吸い込まれるように傷跡が消えた。
「ん、完了」
「ありがとう、姉さん。津美紀も、もう大丈夫だから。そんな顔しないで」
星也が泣きそうな顔をする津美紀の目元に触れる。
治療をしたからか、詞織と伏黒もホッとした表情をしていた。