第1章 夏灯りの約束
「あれ? 二人とも恵の浴衣を選びに行ったんじゃ……」
「もう選んできた」
そう言って、詞織が生地を見せてきた。濃い緑色に薄く筋の入った浴衣だ。伏黒にもよく似合いそうである。
「早かったな」
星也が言うと、伏黒が「三分で終わりました」と返してきた。
「恵はそれで良かったのか?」
「詞織が選んだものなら問題ないです。好みから外れることもないんで」
星也の問いに伏黒が答えると、詞織が少し得意げに「そういうこと」と頷く。
「えっと……」
津美紀が伏黒たちと星也を交互に見た。その様子を見たからか、伏黒が詞織の肩に触れる。
「詞織、俺たちも星良さんとこ行ってよう」
「え、でも、兄さまの浴衣……」
「津美紀がいいの見つけてくれる。ほら、行くぞ」
少し不満そうにする詞織の腕を引っ張り、伏黒が店の奥へと行った。
店内に津美紀と取り残され、星也は一つ息を吐く。
「あの……皆を待たせちゃうし、早く選んじゃいましょう!」
袖を引いてくる津美紀を微笑ましく思いながら、星也は「そうだね」と頷いて後を追った。
* * *