第1章 夏灯りの約束
――日曜日。
店の看板を見上げて津美紀が固まり、伏黒も目を丸くしていた。その様子に、星也は首を傾げる。
「どうしたんだ、二人とも?」
「星也さん? まさか浴衣って、生地から選ぶんですか? 市販のじゃ……」
「こっちの方が色々選べるだろう?」
尋ねてみると、津美紀が青い顔をして冷や汗を流していた。
「いや、こんな上等なモンじゃなくていいですよ。祭りでしか着ないんですから」
いつもより表情を険しくする伏黒の隣で、津美紀がコクコクと頷く。
別に市販品が悪いわけではないし、伏黒の言い分も分かる。
だが、せっかくなのだ。去年の穴埋めも兼ねて、今年は抜かりなくやりたい。
「費用は僕が持つから気にしなくていい。それに、姉さんと詞織は乗り気だよ」
星也が指をさすと、すでに星良と詞織は店の店主と話をしていた。
「あの、費用の話をしてるんじゃなくて……いや、それも気になりますけど! ただでさえ生活の援助をしてもらってるのに……」
「浴衣五人分くらい大した出費じゃないよ。その辺りは恵なら分かるだろう?」
どこまでも気を遣う津美紀だが、ここは折れる気はない。逆に伏黒へ話を振ると、彼も「それは、分かりますけど……」と返してくれる。
「話はまとまったね。じゃあ、そろそろ中に入ろうか」
先を促すと、伏黒と津美紀は一度 顔を見合わせ、逡巡しながらもコクリと頷いた。
* * *