第1章 孤児院時代
「あー……お前!」
やっと見つけた。少女は裏庭の花壇にしゃがみ込み、草花を観察していた。
「お前です。ケフカ、さっきはごめん」
理由も聞かぬまま、誤解(?)のような形で悪い噂を聞かされれば誰だって腹が立つだろう。そう考え先ほどの態度を謝罪した。少女は当たり前の感覚を持っていた。
「あと私の名前、やっぱりお前じゃないです、○○です」
「名前が『お前』だとは思っていないが……」
どうにも独特の空気感を持っているらしい。これもこれで多少面倒だが、泣き叫ぶだけの幼い獣と比べれば彼女は幾分かマシに思える。
「さっきの話だ。補充とはどういうことだ」
「あぁ」
○○はピンと来た顔をして、花壇の端に座った。草花を下敷きにしないよう、丁寧にかき分けて。そして隣を2度叩き、少年を見上げる。
「まあ、座りなよ」
少年が座りやすいよう、同じように植物を避けて場所を確保する。座ったのを確認すると、少女は凪のような目をして話し始めた。
まずここは、帝国から支援を受けながら経営を続ける孤児院であり、
定期的に何かのテストが行われ、成績上位者は季節の変わり目に、軍服姿の大人に連れ去られる。
そこから帰ってきた人間はいない。
それは少年にとって、願ってもない話であった。
「なるほど、帝国は兵力の増強を図ってるんだな。優秀な人材がいれば、帝国軍兵士になれるかもしれないってわけだ」
「そうなるけれど……ケフカは、何を考えてるの?」
感情の乗っていない、凪いだ口調。
単純な疑問。
これにも応える義理はないと一瞬考えたが、先ほどの情報と交換ということにして、少年は口を開く。
「権力者になって、ムカつく奴を全員潰すんだよ」
そう吐き捨てると、自分を捨てた奴らの下卑た顔が脳裏に浮かぶ。ギリ、と歯軋りするのを、少女が見つめていた。
「ムカつく奴って、孤児院の大人も?」
「俺ら使って、金貰って飯食ってんならムカつくだろう。ソイツらもだ」
まだ此処に来て浅い子供が、全方位に牙を向いている。
みんな最初はそうだった。どんどん牙を抜かれて大人しくなった。
でも、この少年は何故だか変わらない気がする。
そう直感して、少女は生まれて初めて、少し微笑んだ。