第1章 孤児院時代
※暴力表現
口内が鉄の味で満ちている。頰は赤く腫れ上がり、触れただけでも鋭い痛みが走った。
いつものアレだ。今日は特に機嫌が悪そうだ。あまり刺激せず嵐が過ぎ去るのを待つしかない。
周りには怯えた子供たち。他の職員は止めるそぶりも見せず、我関せずで背景と同化している。
「この野郎!」
張り裂けるような派手な打音。
今度はあの子が標的か、可哀想に……。
ふと目を外した奥に、見覚えのある金髪が視界に入った。
この「いつものアレ」は、大部屋に女子だけが集められた時に開催される世界一楽しいお祭りだ。
孤児院の力を持った職員が、無差別に女子を張り飛ばし暴行するお祭りだ。
このお祭りの際、孤児院に預けられている男子陣は部屋から出ないように厳命される。されるのだが、猛犬(と勝手に二つ名を付けてみた)のケフカはまあ華麗にスルーするわけだ。
もし見つかれば彼も只事じゃ済まないだろう。なんとかバレないようにするしかないのだが……。はて、何故私は彼のために動こうと考えているのか。
昨日初めて会って、勝手にご飯を食べられて、花壇で初めて笑わせてくれた。
たったそれだけなのに。
ここは一応部屋という仕切りにはなっているが、入り出口の扉にはガラス張りの箇所があり、廊下をうろちょろしているとここから見た際かなり目立つ。
そして最悪なことに、お祭りの主催者が怒りながら「道具をとってくる」と踵を返そうとする。
そして更に、ケフカが本を両手に抱えながら廊下に足を踏み出した、その瞬間だった。
「わあ」
大きな声を出して、わざと転んでみる。
その際、主催者の服を掴み、より暴走し、激昂し、こちらしか見えなくなるように仕掛け、ずり下ろした。
「――!!」
そこからの記憶は、ひどく曖昧なものだった。
――
「……酷い顔だぞ」
「ほっほいへ(ほっといて)」
全顔をガーゼと包帯でぐるぐる巻きにして食堂に現れた私を、ケフカはまるでこの世で一番哀れな捨てられた子犬を見るかのような瞳で見つめてくる。
眉は顰められ、目は少し動揺し、口は引き攣っている。
事象としては他人が怪我をしているというだけなのに、ケフカはこんな顔をするタイプなのだろうか。少し意外と思いつつ、皿のスープを煽ってみた。
とても、血の味がした。