第1章 孤児院時代
痛み。眠れない。
明日は幸運にも当番は回ってこないが、早く起きないと朝ごはんを食いっぱぐれてしまう。
なので早めの就寝をしなければならないのだが、どうにも腫れ上がった顔の痛みが邪魔をして夢の世界に羽ばたけない。
「うーん、医務室……」
数人の子供が寝息を立てる中、もそもそと寝台からこぼれ落ち、床を這って部屋を出る。
蝋燭を灯して、医務室へ向かう途中、何かを抱えたケフカとばったり遭遇してしまった。
「ヒィ!お、お化け……いや、○○か」
「失礼だよ」
「冗談だ」
ケフカは少し気まずそうな表情で、口を開く。
「あのうるさいガキから聞いたんだが」
「お祭りのこと?」
彼の手元を見れば、抱えているのは十字の印がついた桐の箱。
「ついて来い」
――
ツンと鼻を刺激するアルコールの臭い。他の部屋よりかはいくらか清潔感のある施設。並べられた薬剤。
医務室につくと彼は、備え付けの寝台に腰掛け、箱を開ける。
「何してる?」
鋭い目で『こちらに来い』と言われている気がした。
おぼつかない足取りで横に座れば、容赦なく顔のガーゼと包帯を剥ぎ取られた。鋭い痛みが肌を刺激し、思わず声が漏れる。
「こういうのは早くしないといけないんだよ」
抗議の声をあげる間もなく、テキパキと処置を進められる。新しいガーゼを貼られ、新しい包帯を巻かれ、薬を念入りに塗り込まれた。
「知らなかった」
ケフカが低く唸る。何について?お祭りについてか、厳命についてか。でも。
「私が……勝手にやったこと」
上手く言うことを聞かない口を懸命に動かし、伝える。
本当に勝手にやったことだ。自分でも驚いたぐらいなのだ。
「そうだ。お前が勝手にやった、お前が勝手に殴られただけだ」
「これは、俺が勝手にやってることだ」
殴打の後が残る腕や足にも、軟膏を塗りたくられていく。
青紫に変色した箇所に、薬がしみてヒリついた。
「他、怪我した場所は」
淡々とした態度の彼から薬をひったくり、ワンピースを捲り上げる。
踏みつけられて変色した左太ももの付け根と、右側の腹。塗り終わって薬を返そうと押し付けると、ケフカはこちらを凝視していた。しかし視線は合わない。
「こんな怪我見ても楽しくないよ」
そう言うと、彼は弾けるように立ち上がり、そそくさと出て行った。
お礼、言いそびれちゃったな。
