第6章 魔術師編
「ミザロ。の魔力がお前には見えるのか?」
「ええ、視えますよ」
「そうか。俺には魔力が備わっているとは思えないんだが」
「微力ですからね。あなたの視野はおおざっぱですから、魔力の細かな流動には気づかないんです」
紅茶に口をつけ、口元を上げて言う。
ルドガーはこめかみにぴくりと筋を立てていたが、落ち着き払っていた。
「そうかもしれないな。でも今はどうだ? 少し増えたか?」
「どういう意味ですか。昨日の今日で魔力量が変わるわけないでしょう」
白い瞳がちらっとあなたを見据え、なにやら対象を観察する眼差しをされた。
それに捕まると、喉がきゅっと締まるような感覚がする。這う蛇が絡みつくように。
「詳しくは言えないが、俺達は昨日ある試みをしたんでな」
あなたはドキっとする。
二人のプライバシーを明かさない約束は守っているが、少し不自然だ。
「よく分かりませんが、変わってませんよ。私が視る限り」
「そうか、わかった。……もう一つお前に聞きたいことがあるんだが。結界師はどこだ? お前、魔術師長だろう、俺達に会わせろ」
ルドガーがソファの背もたれにどさりと体を預け、高圧的に告げた。
さすがにあなたも彼の腕を引く。
「ちょっと、そんな偉そうな言い方しないでよ。すみませんほんとに」
「ふふふ。もう慣れてますから。あなたも大変ですね、さん。こんなに不躾な夫をもって」
「えっ、夫? へへ。それほどでも」
たしなめられてるのだが、その新鮮な響きについ口元が緩んでしまった。
あなたは彼に変わって事情を説明する。
本当の理由は濁し、物音が近所迷惑になるか心配で、結界師の方に魔法をお願いできないかと相談してみたのだ。
ミザロの仕事以外の私生活はまったく謎だが、年齢不詳の大人な彼には、本当は見透かされていたかもしれない。
またあの不気味な笑みで、あなたとルドガーはしばらく眺められた。