第5章 騎士団編
「それは……難しいでしょう。転移魔法は簡単に見えますが、上位魔法の一種ですよ。あなたが出来るのはせいぜい暖炉に小さな火を灯すぐらいです」
「ええ……なんだ……期待したのに」
しょんぼり肩を落とすと、ミザロは興味がわいたように理由を尋ねてきた。
あなたは照れくさそうに、誰にも言ってなかった思いを明かす。
「ミザロさんの前で言うのも失礼かもしれないんですけど、ルドガーは魔術師が苦手らしくて。私が転移魔法を覚えれば、どこでも送ってあげられますよね?」
「ふふふ……なるほど。彼を大事に思っているのですね。そんな可愛らしい願いをお持ちだとは……」
褒められてこそばゆくなっていると、黒ローブの魔術師はある提案をした。
「魔術を教えてさしあげましょうか」
「……えっ。本当ですか?」
「ええ。でもルドガーには内緒ですよ。びっくりさせてあげましょう」
「内緒……それはちょっと。彼、焼きもち妬きなんです。あとで面倒なことになりますよ」
現実的に教えるが、ミザロは口元を不気味に笑ませたまま、そのトラブルさえも楽しんでいるような表情である。
「では心に留めておいてください。大事なのはあなたのやる気ですから。私はいつでもお待ちしています。ああ、もうひとつ聞きたかったことが」
ミザロがベンチから立ち上がり、あなたは見上げる。
だが彼が次の台詞を口にしたとき、心臓がざわついた。
「あなたにその魔力を与えたのは――」
スッと冷たい顔に囚われ、動けないでいると。
遠くから大きな音が轟いてきた。
「!」
ルドガーの太く雄々しい声だ。
呼ばれて振り向くと、彼は怒りの形相で走り近づいてくる。
「おや。もう来たんですか。こんにちは、ルドガー。この間の任務ぶりですね」
「お前、何を話していた。を解放しろ」
「……ふう。相変わらず話の通じない方だ。私達はただ、知り合った機会にお話をしていただけですよ。ねえさん」
「あ、はい」
ルドガーの登場は嬉しかったが、さっきの台詞の違和感が消えない。
魔力を与えた――?
どういう意味なのだろう。自分という存在は一体。