第5章 騎士団編
そしてある日。ルドガーは任務に出かけていて、あなたは一人で領内にいた。
気をつけろと念を押されてはいるが、彼はここに閉じ込めているわけではない。
自由に出歩いていいと言われたし、公園のような広場に佇んだり、食堂にでも行ってみようかと思ったのだ。
「わぁ、ドキドキする〜。でもここは安全だもんね。誰も近づいてこないし」
まだお洒落はしておらず、動きやすい服装だが、あなたは時々ぴたりと立ち止まって周りを見渡す。
すると濃色の制服の騎士たちが、こちらを見ていたかと思ったら、さっと瞳をそらした。
「やっぱり……なんか見られてるよね」
ぼそっと呟き、何も気にしてない風に装い、また歩き出した。
話しかけられない一方で、屈強な男達の視線はなんだか気まずい。
少なからず異分子の自分が警戒されてるみたいだ。
そのまま外を歩いていると、不気味な空気が漂う暗い建物を見つけた。
うまく言えないが、薄紫色の空に向かって、尖塔から黒い霧のようなものが立ち上ってる感覚がする。
「ここ、なんだろう……?」
「そこは、魔術師塔ですよ。さん」
突然後ろから声をかけられ、あなたは反射的に振り向いた。
気配なく立っていたのは、黒ローブをかぶった陰のある男性だ。
顔は青白く、目の隈が深い。フードの隙間から、白っぽい瞳ににやりと見つめられて肩がすくんだ。
「あの……誰でしょうか」
「失礼。ミザロと申します。私のことを覚えていませんか? あなたと獣の彼を街まで転移魔法で送った者です」
彼はそう明かすと、手を腹の前におき、仰々しくお辞儀をした。
あなたは影の薄かったあの時よりも、彼から強い自我を感じ取り、目を逸らせないでいた。