第5章 騎士団編
「……あっ。お休みのところすみません。ちょっとご挨拶に来ただけなんです。これどうぞ。じゃっ」
「逃げないでくれよ。……ルドガー、こちらが彼女なのかい? 団内で噂になっていたが」
背丈のある筋肉質な男性は、「俺はジュリス。よろしくね」とあなたにウインクした。
対してルドガーは、嫌そうな顔で頷く。
「そうだ。がしようと言うから仕方なくお前に挨拶しただけだ。ではな。俺達にかまうな」
「ふふふっ。そっちから来たくせに、ずいぶんと勝手だな。、この堅物の彼と付き合えるなんて、君はそうとう柔軟な女性に違いない」
フレンドリーに名を呼んだ彼は、上から下まであなたのことを色っぽく眺め、なんだかゾクッとしてきた。
危険人物なのは間違いないのかもしれない。
でもあなたは魔族で騎士の彼が、普通に喋ってくれることに感謝が湧く。
だからこの機会を逃すまいと顔を上向かせた。
「ルドガーって真面目なんですか?」
「そうだよ。戦闘以外は興味を示さない、いい意味で冷たい男だ。こうして長く喋ったのも初めてだしな。……彼のことを知りたいなら、いつでも俺のところにおいで。歓迎しよ――」
そう言いかけたところで、ルドガーが強引にドアを閉めた。
内側から明るい笑い声が聞こえたが、驚いたあなたは彼を見上げる。
「ちょっと、失礼でしょう、まだ喋ってたのに!」
「失礼なのはどっちだ? お前は誰にでも甘い顔をしすぎだ。もっと警戒しろ」
心外なことを言われて憤慨したが、初日から喧嘩してもしょうがないと思い、頬を膨らませながらも彼と一緒に去った。
もうひとつのドアには、違う人が住んでいるが、不在なようだ。
今のジュリスのことを尋ねると、ルドガーは興味なさそうに「第二部隊の隊長だ」と言った。
職務について多くを語らない彼は、自分も部隊に所属していると以前話していた。
あの小屋に来た獣人族の男達との隊である。
それは都市周辺を守る騎士団とは違い、ゼイラン直属の軍らしい。
そのため、なぜ今はここに住んでいるのか、あなたは首を傾げていた。