第4章 新たな始まり編
「その通りだが。あいつが俺の唯一無二の獣なのも正しい。だからこそな……番は慎重に選ばなければならないんだ。……人間のお前にも、それぐらい分かるだろう?」
あなたは本題を問われ、言葉に詰まる。
やっぱり、反対しに来たのだと。
「そう悲しげな顔をするな。お前、本気でルドガーが好きなのか」
「……はい! 本気です!」
「解せんな。隊長セヴァの報告にも耳障りのよい言葉しか書かれてなかったが、要は森で拾われ、獣のあいつに無理やり番にされたんだろう? そんな男をなぜ好きになる」
ぎくっと肩がこわばる。
なぜと言われても、これまでの心の通い合いが、あなたの気持ちをそうさせたからである。
「……彼は優しい人だから。最初は横暴だったけど、でも手つきはいつも優しかった……愛情が伝わってきたんです。それに私を守ってくれるって約束したし。……私の記憶がなくても、構わないって言ってくれたんです!」
思いがあふれるたびに、ゼイランの眉間が深く寄っていく。
「あいつは獣だから純粋なんだよ。童貞だしな。お前のように一見清純で可憐な女には、コロっと騙される。ああ嘆かわしい……戦場では恐れるもののない百戦錬磨の闘獣が、人間の女スパイなんかに掌で転がされるとは」
「なっ!! スパイじゃないです!」
突っ込みたいところがたくさんある台詞だったが、思わず強く反論した。
どうすれば分かってくれるのか。
ルドガーもいないし、無力な自分には太刀打ちできないのが明らかだ。
「守護者さま……どうすれば……」
「あぁ? 今なんて言った」
「いやっなんでもないです!」
「やっぱりスパイだろう。白状しろ」
「違いますって!」
「はあ、なんだか腹が減ったな。おいお前、メシ作れ。あいつが帰るまでまだ時間がある」
突然色気のあるため息で命令され、あなたは反感を持ちそうになったが、へそを曲げて帰られてしまったら、本当に終わりな気がした。
だからルドガーが戻るまでは、なにをしてでも引き止めなければと考えた。