第26章 彼女を知る者
それからしばらくして、黒服をまとった女主人と側近は、あなたをじっと見下ろしていた。
天蓋つきのベッドに眠る少女は、黒のワンピースを着て目を閉じている。
「いよいよだな」
「はい……本当によいのですね」
「ああ。あの獣のほうはどうなっている」
「深い森でのパトロールのため、小屋に常駐しています。いつも独りのようです」
隠密調査を済ませていたデシエの報告を受け、ネメニアは頷いた。
「を綺麗に清めろ。一切の匂いも残すな。森の香りだけでよい」
「わかりました。防護魔法のほうはいかがしますか」
「私がやろう」
そう言うと彼女は手をかざし、あなたにどのような傷もつかないように、赤い膜のようなバリアを張った。
色あせて消えていき、ネメニア以外には痕跡がわからないようにする。
「私とこの子は、細い一本の糸で無意識に繋がっている。あらゆる感情を私はうっすらと感じ取ることができる」
だから、もしあなたが本当につらい思いをした時には――すぐに助ける準備が出来ていた。
そしてもうひとつネメニアにとって重要だったのは、記憶に関することだった。
「の過去の記憶はすべて消す。この魔界で生かそうとするのなら、やむを得ん」
「……ええ。そうですね。そのほうがいいでしょう。新しい人生を送るために」
二人はそう頷き合い、覚悟のいる決断をしたのだった。