第26章 彼女を知る者
視線を向けると、小屋から戻ってきたルドガーが、服を着替え、体も簡単に洗った様子なのが分かった。
黒髪に黒角の生えた大柄な青年が、息を切らしてそばに立つ。
手に毛布を抱え、あなたを見下ろしたかと思うと、それを使ってくるみ、抱き上げた。
「……くぅっ!」
微かにあなたが目覚める音が聞こえ、デシエははらはらと伺う。
ルドガーは無言で、あなたを持ち帰ろうとしていた。
少女が喋る声が聞こえたが、見守っていた魔術師は静かにその場を離れた。
吸血族の胸の鼓動は、久々に鳴り続けていた。
側近が古城に戻って来たのは、そのすぐあとだ。
「閣下⋯⋯! さんが、無事に拾われましたよ!」
「ほう、そうか。ふふふ、いい知らせだ」
二人の美女の間に、ほっとした微笑みが広がり、胸まで高揚している。
デシエの報告を受け、ネメニアも満足していた。
あなたの感情も落ち着いているし、今のところは大丈夫そうだ。
もちろん当面は細心の注意を払うつもりだが、ここから先はもう、行く末を見守るしかない。
「うまくいってくれますかね」
「わからんが……私達には手が届かない未来だ」
侘しさが漂うものの、ネメニアの表情は不思議と朗らかだった。
まだ喋ったこともないあなたの、居場所が見つかることを願う。
まだ何も知らないあなたが、いつか愛を見つけることを願う。
「でも、きっと大丈夫な予感がするのだ」
「なぜですか?」
「私はの、守護者だからさ」
ネメニアはそう告げて、その言葉の響きにも口元がほころんでいた。