第26章 彼女を知る者
部屋のカーテンは薄ピンクに差し替えられ、家具も女の子らしいものが増えていた。
黒い天蓋は開かれ、そばのクローゼットに服を詰める側近を発見した。
「お前……服を買いすぎではないか、デシエ」
「閣下。おかえりなさいませ。……ええ、でもさんに似合うと思いませんか?」
側近はくるりと振り返り、楽しそうに微笑む。
天蓋の中には髪も衣服も綺麗に整えられて眠る、あなたがいた。
クローゼットがいっぱいになるほど、若い女性の色とりどりの服が並べられている。
ネメニアはため息をついた。
「さん、ですよね? 彼女の名前」
「……ああ、そうだ」
「仲間にされないのですか?」
最近どこか思案顔の主人の姿に、デシエは率直に尋ねる。
「仲間か……」
ネメニアは答えきれず、椅子に腰を下ろした。
その後、従者に茶を入れさせ、あなたの部屋で過ごした。
夜はここにいることが多く、考えをまとめようとする。
「お前を仲間にすれば、私のよき理解者になってくれるかもしれんな……」
彼女は孤独だ。
これだけ長く生きても、まだ寿命の半分にも達していない。
今このヴェルガロン家にいる者達が全員死んでも、自分は生きている。
愛しい者に出会ったこともあったが、いつも自ら去る運命だった。
そんな中で、獣を世話することだけが、彼女の癒やしとなっていた。
あなたが獣を大事にしていた姿に、共感がわいたのも事実だ。
「だが、お前を仲間にしたとして……そこにお前の幸せがあるのだろうか」
ネメニアは天蓋ごしに、あなたの無垢な寝顔を見つめた。
「お前は私とは違い、きっと家族が必要なのだろうな⋯⋯」
そして自分には、それを与えることが出来ない。
村で一生懸命に、他人のために生きていた少女。
あの子供たちの後を、ネメニアがその後思い付きで辿ったら、他の街の教会に保護されていた。
この少女にはこれから、愛し愛される存在がいるといい。
それがきっと、この子に幸せをもたらすだろう。
ネメニアは勝手にそう思うようになった。