第26章 彼女を知る者
それから数日しても、あなたは眠ったまま目覚めないようにされていた。
ネメニアには理由が必要だった。
他人嫌いの自分が、わざわざ人間界から魔界へ連れてきた理由が。
「閣下」
そんな折、男が尋ねてくる。
金髪をオールバックにし、ヴェルガロン家の銀の刺繡が入った黒いローブを、身を隠すように常にまとっている。
おもしろい冗談ひとつも言えないお堅い魔術師の男だ。
「どうしたのだ、ダーリス。新しい獣を保護したか」
「はい。どうぞ、ご確認を」
部下と一緒に施設の本部へと転移した。
ネメニアは、魔界にいる魔獣の希少種を保護、育成する施設の創始者だ。
違法なハンターに狙われ、不当な扱いを受ける恐れのある獣たちを保護し、身分の確かな貴族へ里親に出すことが目的だった。
「ふむ、問題ないな。奴らをきちんと訓練させ、世話をしろ」
「かしこまりました」
昔は直接触れたり、可愛がって育てていたネメニアだが、施設の規模や数が大きくなるにつれ、距離を保った実務的な運営に変化させていた。
里親のもとでうまくやっていくには、情が移りすぎてもよくない。
生きていくために必要な訓練を与え、責任を果たすのが使命である。
「魔術師の管理もきちんと行っているだろうな? 二十年前のあの事件は二度と起こしてはならん。間違った行いをする者は即処罰しろ」
「もちろんです、閣下。適切な指導を行うよう、徹底しております」
ダーリスは胸に手を当て、忠実に答えた。
彼はこの家の現当主の側近であり、ネメニアとは普段関わることはない。だが仕事の面では、任せられる男だった。
彼女はそれから、またあなたの様子を見に戻っていった。