第26章 彼女を知る者
古城へ帰ると、ネメニアはあなたを誰も使っていない部屋へ連れていった。
黒い天蓋の中のベッドに、そっと寝かせる。
そしてふと思った。
「私はなぜこんなことを……」
しばらく眺めていたが、暖炉に火を入れ、椅子に座った。
物思いに耽っていると、廊下の足音が部屋の前で止まった。
扉が静かに開く。
黒いレースの服をまとった、紫髪の女が立っていた。
「閣下。こちらにいらっしゃったのですね。……んっ? その女性はいったい……」
ゆるやかな髪を揺らし、驚いた表情で近づいてくる。
彼女もまた同じ吸血族で、魔術に長ける者だ。
「デシエ。この子に合った服を着せろ。しばらく世話を頼む」
「ええ。かしこまりました。……人間界からお連れになったのですか?」
顔に汚れがついたまま眠っている少女を、注意深く眺めた。
主人は「そうだ」としか言わなかったが、側近のデシエにはそれで充分であった。