第26章 彼女を知る者
「そう敵視するな。この子を傷つける意図はない。……私はただ、この一族の隠居した身なのだよ」
ふっと諦めに似た笑みで告げ、ルドガーを捉えた。
もてあそぶような瞳は居心地を悪くさせる。威圧感は影を潜めていたが、まるで主人のゼイランのように底知れなさを漂わせていた。
「ルドガーよ。この子の記憶を消してほしいか」
そう問われたとき、ルドガーの心臓が鷲掴まれ、苦痛が走った。
守護者は彼の弱点を分かったつもりで、かつ純粋な問いだった。
「いい、そんなことは望んでいない。それはあいつが生きた大事な過去だ」
膝を両手で握り、頭を振って吐きだす。
「ほう? その過去が恐ろしくないのか。記憶を取り戻せば、お前との日々もなくなるかもしれんぞ」
女は非情な揺さぶりをしてくる。
「そうしたら俺は⋯⋯もう一度に好きになってもらえるように、頑張る。何度でも、俺はを手に入れるために、やるしかないんだ」
ルドガーの焦がれる瞳は、眠るあなたを映した。
「俺はずっと、小屋にを隠していた。守りたかったからだが、一番は自分だけのものにしておきたい気持ちが強かった」
苦しげに言い、手に力がこめられる。
「は色んなものを見つけた。あんたのことも、仲間も、魔術だって。俺は正直、寂しくなった。怖くなった。それでもは、そんなオスのくせに情けない俺の姿を見ても、愛してくれるんだ。俺のどんな面でも良いと言ってくれる」
ルドガーの瞳は、優しく和らぐ。
これまでの日々を思い出すように。
それはすべて、彼が初めて手にした宝物だった。
「だから俺も、のすべてを受け止める。どんなあいつでも、俺の最愛の女だ。一生大切にすると、誓っているんだ!」
守護者は納得した顔つきで、静かに聞いていた。
忘れていた感情を、噛みしめるように。
そして、何かに気づいたように、彼女はベッドを見やった。