第25章 魔術師と護衛編
「ねえ、公爵様のお母さんって、彼のことを愛していたんだろうね」
「……そうだろうな」
「お父さんも、彼なりに愛してたんだろうね」
「ああ」
二人でとりとめもなく話すが、親の愛情というものが、あなたにはなぜかしっくりこなかった。
頭では分かるし、いい話だとも思う。
でも、どこか自分とは遠い世界の話に聞こえた。
「ルドガーにはゼイラン様がいるけど、本当の親のこと知りたいとか、思ったりする?」
隣を純粋に見つめると、彼は首を振った。
「いいや、思わないな。……俺にはもともと、備わった情とかはないのかもな。向こうもそうだろう」
あっさりと告げて、彼は主人のゼイランの愛情があるから十分だとも話した。
今の二人を見て、過去の話も聞いたあなたは納得する。
「お前は……」
ルドガーは、あなたに視線を移し、少し臆病な眼差しで言いかけた。
「……私もそうかも。どうしてだろうね。あんまり、何も感じないの」
そう呟いたときの感情は、別に悲しくも暗くもない。
最初から何もないかのように、空洞な感じだ。
すると、ルドガーにまた、きつく抱きしめられた。
あなたは瞳をつぶり、この温もりさえあればいいのだと、心から思う。
「でもね、ルドガー。あなたへの愛を知ってるから。あなたからの愛も知ってるから。……私、愛情にかけては、エキスパートだよ」
そうにこりと微笑む。
すると彼も、あなたにつられたように頷いて、あなたの大好きな微笑みを見せてくれた。
「知っている、。俺もお前に愛を教わった。だからそれさえあれば、構わないんだ」
二人はこの屋敷に来て、初めて口づけを交わす。
つかの間の時間だったが、それは二人の象徴だった。