第25章 魔術師と護衛編
「……でも父は、あれ以来、僕に母の話をしなかった……いつも優しかったけれど、距離が出来てしまった……」
そして母が亡くなり、何十年後に父が亡くなる。
彼は成長するにつれ、この記憶を少年の頃の思い出として、心の隅に追いやっていた。
「父上……うっ……うぅっ……」
すると突然ディスターが子供のように泣き始めたので、あなたは動揺する。
意図せず彼の深い心理に達してしまったようだ。
「ディスターさん、大丈夫ですよ。さあ、もうすぐ目覚めましょうか。……私がそばにいますからね」
仰向けで寝ている彼の首下に手を差し入れ、楽にさせようとした。
すると様子を見ていたルドガーも、心配そうに近づいてくる。
「……さあ、ゆっくりです。目を覚まして……」
公爵は目元を赤くし、幼げな顔つきで瞳を開いた。
そして徐々に体を起こすと、あなたに突然、腕を回し体を引き寄せてきた。
「ちょっ、わあっ」
「……父上っ」
小柄な体はまったく男性とは似つかないが、ディスターに抱きつかれてあなたは衝撃を受ける。
ルドガーは彼の肩を掴み、引きはがそうとしたが、あなたは今この瞬間だけは、これでいいと認めることにした。
「大丈夫です、もう少しだけ」
そうルドガーに伝えて、そっと公爵の背中をさすった。
「……ッ……私がやります」
護衛の騎士はひざまずき、公爵の背中を代わりに大きくさする。
あなたは目を見開いたが、彼の手のほうが父親の手に近いかも、そう思って任せた。
「……ああ、父上っ……」
不可思議な光景に包まれ、二人で公爵をなだめる形になった。