第25章 魔術師と護衛編
さっそく彼の額に手を伸ばして呪文を詠唱し、術に取り掛かった。
「こんにちは、ディスターさん。私はです。今日はあなたと、お父様の思い出についてお話したいと思っています。……よろしいですか?」
「……ああ……わかった……」
彼の唇がわずかに動き、表情は平坦なままだ。
術式は成功したようだ。
了承を得て、あなたは話を続けた。
「あなたは今、お父様と一緒にいます。自分の手や足元を見てください。何歳ぐらいの自分だと思いますか?」
「……幼い少年だ……父上は、僕と一緒に、屋根裏にいる……」
「わかりました。隣にいるお父様は、どんな表情をしているんでしょう」
「…………緊張している。……言いづらそうに、僕に…木箱を渡した……」
彼の意識がすでに向けられていたのか、ピンポイントでその場面にたどり着き、あなたは深呼吸をする。
「あなたはそれを開けましたか」
「……開けて、僕は怒った」
「なぜですか」
「……父上が……母に渡してくれと言ったからだ……」
催眠にかかったディスターの声は、本当に怒りを滲ませていた。
あなたは彼の心に負荷をかけないように注意する。
「なるほど……。どうしてあなたの気持ちが、怒りに向いてしまったのだと思います?」
「……三人目の弟が生まれたばかりで……父は母に会うことが……なくなっていたから」
それを知って、あなたの心は揺れた。
話を聞いていくと、弟や妹が産まれるたびに、父は長男の自分に会いにきたのだという。
ご機嫌取りのように感じて、普段距離のある父に対し、ディスターは冷たい態度を取っていた。
そしてこの耳飾りも、自分で渡せばいいと突っ返し、そのままどこかに置き去りにした。
「……僕は……母に渡さなかった。……渡せばよかったのに。……どうして無視してしまったんだろう……あんなに愛情深かった方に……」
彼は悔いるように、声が弱弱しくなった。
あなたは心配し、彼の表情を見つめる。
「きっと、ディスターさんはお母様の心も、ご自分の心も、守りたかっただけですよ。少年だったあなたには、お父様の気持ちまで背負うことは、出来なかったと思います」
優しく声をかけると、彼は泣きそうな顔をして、言葉に詰まった。