第25章 魔術師と護衛編
ディスターが眠っている間、あなたはその姿を見ながら、考え事をしていた。
資料によると、彼は何の記憶が抜け落ちているのかさえ、知らないらしい。
ただ大人になってから、自分はなにか大事なことを忘れていると、ぼんやり感じ始めたという。
その時期は、彼の父親が亡くなった頃だった。
鍵はそこに隠されていると思われ、これまでの魔術師らも父親との記憶を探ったのだが、彼は扉を閉ざしたように催眠は失敗に終わっていた。
「……ん……」
公爵の彼が身をよじり、静かに目を覚ます。
寝入ってしまってから、3時間が経っていた。
「ディスター様。お目覚めになられますか」
「……ああ。君、ずっとそこにいたのか」
「はい。あなたはぐっすり眠っておられましたよ」
丁寧に告げると、執事に頼んでいたお茶のポットを火魔法で温め、彼に入れた。
寝起きの公爵はやや清々しい顔つきで、背を屈めそれを口に含んでいる。
「今、なぜか頭がすっきりしているよ。人前で寝たのは久しぶりだ。……しかも君のような初対面の者の前でね。」
自分をふっと笑い、美しい男性がこちらを興味深そうに見ている。
その顔つきが、少し曇った。
「さっき、夢を見たようだ」
「夢?」
「そうだ。だが、思い出せない。……なにか、父に関するものだった気がするんだが……」
彼は真面目な顔で悩んでしまった。
それを探りたい気もしたが、彼が金髪をくしゃりと掴み、大きくため息をついたのを見て、あなたはこう言った。
「それは大きな一歩だと思いますよ。ディスター様は、普段は夢を見ないんですよね?」
「ああ。見ないようにしている、といったほうが正しいか。意識的にね」
悪魔族はそんなことも可能なのかと思いつつ、夢の話題をそれ以上広げることはやめた。
「また思い出したら教えるよ」
「はい、そうしてください」
「ふっ……君は本当に僕を急かさないな。気に入ったよ。そうだ、今度から昼寝のときは、君がついていてくれないかい?」
「うーん。それは分かりません。私、結構日々忙しいんですよ」
明るく告げると、公爵はまた素の顔つきで笑い声を出した。