第25章 魔術師と護衛編
「ふっ。それで催眠を始めるか? のんびりしているように見えたが、案外仕事熱心なんだな」
「いえ、まだかけませんよ。あなたにリラックスしてほしいだけです」
腰を上げて、抵抗感のないディスターをソファに寝そべらせた。
彼は公務続きで、今回の短い休暇に入るまで、実際に疲れが溜まっていたようだ。
片手を上げて優雅にあおむけになる男に、遠くにあったブランケットをかける。
そうして温かく接していると、公爵は素に近い面持ちで笑った。
「眠くなってきたな。仕事を続けても構わないよ」
「いえいえ。これが私のやり方なんです。緊急時を除いて、まだそれほど親しくない人にいきなり催眠をかけて、何かを聞き出そうとするのは、あまり気が進まないんですよね」
そう話すと、ディスターはゆっくり目を閉じていく。
「なので、催眠は明日にしましょうか。まだ時間はありますし、ここはあなたのお家なんですから。ディスター様」
「……僕の、家……?」
「ええ、そうですよ。あなたがゆっくりとくつろげる、安らげるお家です。……何も心配せず、お休みになってくださいね」
ブランケットに、優しく手を重ねて告げると、彼はそのまま眠ってしまった。
あなたはしばらく見つめていたが、静かになった室内を歩き、扉へと向かう。
そしてそっと開けると、ルドガーがすぐに振り向き立ち上がった。
「今、眠ってしまったみたいです。私はしばらく見守っていますから」
「……はい。大丈夫ですか」
「大丈夫ですよ」
瞳が揺れ動いている護衛の彼に、あなたは穏やかに笑む。
本当はぎゅっと服の袖を握りたい気持ちはあったが、そのままゆっくり扉を閉じた。