第25章 魔術師と護衛編
ルドガーは一瞬眉をぴくっと寄せたが、態度には示さない。
二人だけのアイコンタクトをしたつもりで、頷きを交わした。
「わかりました。では私は外で待機しています」
彼の抑揚のない声に、あなたの背筋までぴんと伸びた。
他人のふりをすることは本当に苦しいが、今は任務中だ。まっとうしなければ。
書斎室に静かに残され、公爵は満足げだった。
「ふふっ、ようやく二人きりだね。。さあ、他に何が聞きたい? なんでも答えよう」
彼はそう言うと、流れで同じソファに腰かけてくる。
あなたは一瞬「ん?」と思ったが、間をあけて座り直し、彼に微笑みかけた。
「そうですね……ではさっきのお話の続きをしましょうか。ただ一人の女性を待っているというお話を——」
「ああ、それか。そんなくだらない話、どうでもいいじゃないか。なぜなら、この魔界では夢物語だからさ」
彼はそう言って、あなたの耳当てに手を伸ばし、そっと取り払ってしまった。
「あっ! 返してください!」
「やっぱり。……ふふっ。僕の目がごまかせると思ったかい? 公爵家というのはな、ほぼ悪魔族が占めてるんだ。人間の違いと魔族の違いは、感覚的に分かるものだよ」
瞳が意味深に細められ、あなたは愕然とする。
そうか。この人はゼイランの一族より少し格が落ちるものの、悪魔族の公爵なのだ。
「あら~バレちゃいましたか、すみません。隠していたつもりは…あるんですけど。私はまだまだ新人なので、すこしでも自分を大きく見せたかったんです」
「ははっ。素直な娘だな。……構わないよ。僕も自分をさらけ出す覚悟だからね。じゃあまず君のことを教えてくれないか。なぜ人間がここにいるのか、興味がそそるよ」
あなたはむしろやりやすくなった思いがしたが、彼の要求を受け入れるわけにはいかなかった。