第25章 魔術師と護衛編
書斎室には上質なカーペットが敷かれ、長いカーテンや格式ある家具が並んでいた。
公爵ディスターは一人掛けの椅子に腰かけ、あなたは斜め前のソファに座っている。
「ディスター様は、こちらで普段おひとりで過ごされてるんですか?」
「いいや、ここは別邸だ。最小限の使用人を置いて、一人で過ごしたいときに来るんだ。自宅は都市部にあってね。いろんな女を連れ込むには、そっちのほうが都合がいい」
あっけらかんと語られ、まだ若いあなたは作り笑いを浮かべるしかなかった。
でも落ち着きたいときに使う別邸に今回は招かれたと知り、彼の記憶に対する真剣な思いも少し感じられた。
公爵は独身で、まだ結婚に興味がないようだ。
理由を尋ねると、彼は口端を上げて肩をすくめた。
「魔族なんてそんなものだろう。僕も兄弟は多いが、全員母親が違う。父はとびきりの美形で優しい人だったから、当然なんだがね。だが僕は、そうはなりたくない。こう見えて、ただ一人の女性を探しているんだよ」
あなたを見てにやりと笑まれ、こちらも神妙に頷いていた。
すると彼の形良い瞳は、後方の入り口付近に向けられる。
やや顔をしかめてこう指摘した。
「——ところで君。いつまでこの部屋にいるつもりだ? 男の君がいると、こちらはリラックスして彼女に心が開けないんだよな。出てってくれないか」
振り向くと、騎士の装いのルドガーが、背をまっすぐにして椅子に腰かけている。
「ですが、私は護衛なので。規則です」
「そんなチンケなものよりも、この屋敷の当主である僕に従え。さあ」
彼が厳しい声で命じると、あなたは慌てて立ち上がった。
ルドガーのもとへ歩いていく。そしてまっすぐと見つめた。
「大丈夫ですよ、ルドガーさん。何かあったらすぐに呼びますから。部屋のすぐ外で待っていてもらえますか」
優しく声をかけて、彼の瞳を見た。