第25章 魔術師と護衛編
「やあ、来たか。君が今回の担当の女魔術師だな。よろしく頼むよ。僕は公爵のディスターだ」
「と申します。よろしくお願いいたします。公爵様」
「そんな堅苦しくせず、名前で構わない」
優雅に握手をされて、男性を見上げる。
まばゆい金髪を横に流し、真っ白な肌に鮮やかな緑の瞳が映える、本物の美形だ。
三十代ほどに見えたが、目つきや佇まいからは女性慣れした男の余裕が感じられる。
耳の尖った魔族の彼は、小柄なあなたを上から下まで眺めた。
「あの⋯⋯ディスター様?」
「君、いくつ? 可愛らしいな。今までの女達とは違うな。⋯⋯その耳当て、暑いだろう? 屋内では取るといい」
ピンクのローブとお揃いのふわっとした耳当てに、ゆったりしたシャツ姿の彼は手を伸ばした。
身をすくめようとしたそのとき、あなたの肩に後ろからそっと手が添えられ、そのまま引き寄せられる。
見ると、ルドガーが無表情で立っていた。
「公爵様。魔術師にむやみにお手を触れませんよう」
「んん⋯? なんだ君は。護衛騎士のぶんざいで、僕らの会話に入らないでもらえるか?」
公爵は高圧的な言葉とは裏腹に、口調は柔らかく、口元には笑みまで浮かべている。
ディスターは目の前に直立する、自分よりも大柄なルドガーをじっと見た。
とくに、黒髪から生えた黒い角へと視線を向ける。
「ふん、ゼイラン殿の騎士団もおかしな奴を入れるようになったのだな。多様性というやつか? 嘆かわしい。魔族の伝統を履き違えないでもらいたいものだ」
目の前で主人と自分をディスられ、あなたはルドガーの反応を恐れる。
だが軍人として任務に忠実な彼は、いっさい顔色を変えなかった。
長剣を携えたまま、静かに手を後ろに組み、待機している。
「ふっ。まあいい。⋯⋯さあ。堅物騎士は置いといて、僕たちの会話を始めよう。君と仲良くなれるのが楽しみだよ」
態度をがらりと変え、公爵はあなたを奥の書斎室へと招こうとしていた。