第24章 入団編
「おい。どうした?」
横で大人しくしていたゲインが腕を組み声をかけると「いえ」と眼鏡の男性は返事した。
そして去り際に地面から何かを拾う。
あなたにそれを手渡した。
「これ、どうぞ」
「あっどうも、すみません」
まさかまたハンカチを落としてしまったかと焦り受け取ると、それは名刺だった。
紙を見やると、眼鏡の男は去っていった。
「なにこれ……ティル・ヴァンガー24歳。趣味は料理と栽培。特技は氷漬けとクローン培養。彼女募集中。……」
あなたが目を凝らして読んでいると、ゲインがそれを取った。
「なんだぁ? 、あんたあいつにナンパされてんじゃねえか? 獣の兄ちゃんの女なのにな、恐れてないのかねえ。やっぱ団一番の異常者は違うぜ」
なぜか褒めるように衝撃的なことを連ね、あなたは青ざめだ。
「えっ……? あの普通そうな人も、おかしいんですか?」
「おう。嬢ちゃん、いっとくがな、ここに普通の奴はいねえ」
「……私は普通ですよ! 見てくださいよ、普通の女の子です!」
必死の形相で訴えるけれど、ゲインは「どこが?」という疑いの顔つきで聞いてくれなかった。
確かに自分の境遇を考えると、かなりぶっ飛んではいるが。
「おっ。魔術師長の部屋ついたぜ。じゃあ俺はこの辺で——」
「ご苦労様です、ゲイン。あなたもどうぞ」
タイミングを見計らったかのように黒ローブのミザロが執務室から出てきた。
あなたはいつもと違う場で会う新鮮な彼の姿に、瞳を明るくする。
「師匠! こんなところにいたんですか」
「当たり前でしょう。私はこの団のトップですよ。最近は多く騎士団にいるのは、ほとんどあなたのためなんです」
「本当ですか、嬉しいです~」
へへへ、と頬がにやけるとゲインは驚いた様子だった。
「あんたすげえな。俺は師長と二人きりでは過ごしたくないぜ。この人が一番やべえんだぞ」
「いやさっき会った人たちのほうが絶対ヤバいですって!」
好き勝手喋る年齢差のある男女を、呆れ顔のミザロは中に通した。
茶を出してもらい、格調高い家具に囲まれた応接間のソファに、三人は向かい合った。