第23章 真相編
ゼイランの屋敷は広大な土地にあった。
周囲を庭園と私有地の森に囲まれ、少し歩けば川もある、見晴らしのいい場所だ。
大きな門の内外には強力な防護結界が張られていたが、有力公爵家の当主であるゼイランを攻撃する者はいない。
「今日からここがお前の家だ。自由に過ごせ」
玄関扉の前で執事に迎えられ、ゼイランが長い大理石の通路に獣を下ろすと、彼は目を輝かせた。
豪華な屋内を物珍しそうに歩き出し、徐々に駆けだしていく。
そんな青い幼獣の姿を見送ったゼイランは、老齢の執事にこう言った。
「あいつを風呂に入れろ。そのあとは何か食わせろ」
「かしこまりました」
制服姿の執事が仕事に取り掛かると、あとは自分の時間だ。
今日は一日休みを取っているため、彼は普通の家一つ分もあろうかという白いリビングで過ごす。
ガウンを羽織り、優雅にワインを飲んでいた。
すると向こうから獣ではない二足歩行の軽い足音が響いてきた。
「ゼイランさま!」
怪訝に振り向くと、黒髪に黒い角を生やした褐色肌の少年が立っていた。
まだ髪も体も濡れていて、腰にタオルを巻いた状態で、駆け寄ってくる。
ゼイランは顔をしかめ、グラスをゆっくりとサイドテーブルに置いた。
「へえ。お前、人化できるのか。俺はガキが苦手なんでな。早く大きくなれ」
淀みなく告げて、ソファの後ろに佇んでいた執事に手をやった。
タオルを受け取り、少年の頭にぱさりとかけてやる。
「わかった!」
少年は黒い瞳をぱっちりと開けて元気に頷く。彼はそれ以来、ゼイランのように大きな男になると決めた。
その後、衣服を着せて食事をさせ、少年に部屋を割り当てた。
深夜には何か大きな音がすることもあったが、ゼイランは躾はこれからすればいいと考えていた。