第2章 訪問客編
「⋯なっ、こんなとこでだめだってばっ」
「少しならいいだろう? 俺も安心したいんだ」
意味深な言葉で肩をすくめる彼を、赤く染まった顔で見つめ返す。
まったくそうは見えないが、もしかしてルドガーも緊張してるのかもしれないと感じた。
そんなとき、後ろからコンコンと扉を叩く音がした。
「待たせてすまない。お邪魔かな?」
低くソフトな声に振り向くと、開け放たれた大扉から大柄な虎獣人がやって来た。
彼も軍服姿で、歩いてくる様子からすでに誠実で育ちの良さそうなオーラが放たれている。
あなたは慌てて立ち上がり、お辞儀をする。
今のを見られたかもと恥ずかしくなってきた。
「あっいえ大丈夫です! こんにちは、セヴァさん。今日はお招きありがとうございます」
「やあ、さん。また君に会えて嬉しいよ。元気そうだね。どうだい、ケーキを用意したんだ。たくさん食べてくれ」
「⋯⋯えっ? いいんですか?」
あなたは再会したばかりだというのに、目の色が変わる。
ルドガーと隊長が話し始めたので、自分は甘いものにそっと手を伸ばした。
実は魔界のデザートがどんなものか、ずっと気になっていたのだ。
「美味しい〜っ。ほっぺたがとろけそう」
若い女の子のあなたはケーキやマフィンを頬張り、感嘆の声をもらす。もうこれは本能的なものであった。
そんな普段とは違う様子に、ルドガーは隊長をじろりと捉える。
「食い物で釣るとはな。あんなに美味そうに食ってる姿は初めて見た」
「ははは。女性はとくに菓子類が好きだと思ってな。お前も用意してあげるといい」
お茶も出され、三人は白い縦長のテーブルにつく。
ルドガーはまっすぐ隊長を見据えたままだ。
あなたは緊張もあったが考えないようにゆっくり紅茶を含んだ。
「それで、俺に話があるそうじゃないか。この前のことなら申し訳なかった。配慮が足らなかったな。皆も表面的には反省してくれたぞ。⋯⋯まあ性格はお前も知っているだろうから、今度会ったらからかわれるだろうけどな」
隊長セヴァは苦笑しながらも、あなたを柔らかい目つきで眺める。
彼からは終始敵ではなく、好意的な眼差しを受け取っていた。
しかしそのたびにルドガーの気持ちは落ち着かなくなる。