第20章 任務編
数日後、あなた達はまた騎士団の敷地内で顔を合わせた。
整った芝生の上に建てられた広い小屋の中だ。
黒い大きな石桶に湯気の立つお湯がたまっている。作業着に鉢巻きを巻いたセロが慣れた手つきで棒を使いかき回していた。
それを見ていたナザルは、しらーっとした顔つきだった。
「オイなんだそのお笑いな格好は。お前ふざけてんのか?」
「俺は形から入るんだよ。ほらさっさと脱げよ、今一番湯がいいタイミングなんだから!」
急かすセロの前で、ナザルがぴたっとした半袖に首をくぐらせ、上半身裸になる。
一度見たことのある日に焼けた筋肉質な背中だ。
あなたの両目をルドガーの大きな手のひらがそっと後ろから覆った。
ドキドキする。ナザルが今から獣化するということは、あなた達もそれを見てもいいということなのだ。
それはナザルにとって、大きな意味をもつに違いなかった。
「終わった? 終わった?」
「待て。⋯⋯っ! うそだろ」
ルドガーの素の驚きの声が、頭上から聞こえてくる。
あなたはもう待ちきれなかった。
ナザルの獣の姿は、いったい――。
ゆっくりと手を外され、視界が開ける。
すると、瞳が釘付けになった。
眼の前に現れたのは、波のように曲がった茶色の角、まっすぐに立った三角の獣耳。
そしてルドガーより大人びた、鼻先が尖った狼のような顔つきだ。
すらりと整った筋肉質な体躯が、赤く艶めいた毛に覆われている、大型獣だった。
「えっ⋯⋯彼も⋯⋯やっぱり、あなたと同じ種族なの⋯⋯?」
「そのようだ⋯⋯信じられん」
あなたとルドガーは、荘厳に揺らめく炎のような獣に近づいていった。
するとナザルの茶色の涼しげな瞳が、静かに見つめてきた。