第25章 魔術師と護衛編
「へへっ。なんだか恥ずかしいな。真面目な話しちゃったね」
「別にいいさ。どんな話でもしたっていい。番だからな」
あなたを守るように、彼は胸を張って森を歩く。
公爵ディスターはああ言っていたが、あなたの魔術師としての感覚を使っても、この森にとくに何も感じなかった。
だがルドガーが、ある地点でピタリと足を止める。
深い森林の向こうをじっと彼は見つめた。
「どうしたの?」
「……いや……ここから向こうだけ、やけに静かだ。動物の声もしない」
彼はあなたと手を繋ぎ、ゆっくりと足を踏み入れた。
だが、魔術による特殊な結界や封印物などの気配はなく、いたって普通の森だ。
ただ自然はあるのに、中に住んでいるはずの生き物の物音が、異様に静かだった。
「どういうこと…? ……うーん確かに……なんか、虫の音とかも聞こえないね…」
あなたが注意を払って、だんだんと鬱蒼としてくる木々の間を通り抜ける。
するとルドガーが、突然体を強張らせた。
つないだ手を強く握り、痛いほどで見上げる。
彼の視線を追うと、木々の向こうから、男の影が見えた。
「誰……?」
目を凝らすと、かなり大柄な金髪の男で、髪をオールバックにして流している。
肌は透けるほどに白く、凛々しい眉と冷たい精悍な顔立ちだ。
そして、黒く長いローブで全身を覆っていた。
「お前、誰だ……?」
ルドガーは、混乱を浮かべた表情で、そう発した。
男は明らかに魔術師のようだ。近くまで物音を立てずに歩いてくると、不気味な赤い瞳をしていた。
「……侵入者か」
男は一言、そう呟いた。
そしてわずかに顔を傾け、不可解そうにルドガーのことを見つめた。