第2章 訪問客編
「何を言ってるの? 今日会ったばかりの人に惚れるわけないでしょう」
「俺は森に落ちていたお前をひと目見て気に入った。ベッドに寝かせて、目覚めたあとは強烈に欲しくなった」
射抜くような激しく甘い眼差しに、言葉が奪われる。
なにやら急に頭まで熱くなってきた。
彼にドキドキするなんて、おかしい。
「それは⋯⋯ルドガーだけだよ。私も彼を何とも思ってないし、彼も私のこと何とも思ってないよ」
サッと正面に向き直り、そう口にした。
今隣をきちんと見つめる勇気がなくなってしまった。
ルドガーはそんなあなたの気を引きたくて、頬にそっと手を添えて自分に向かせる。
「⋯⋯本当だってば。だって今、あなたと一緒にいるんだから」
「俺と一緒⋯⋯? 本当か」
まだ甘くざらっとした声で尋ねてきて、黙って頷いた。
白シャツからのぞく胸板が近づいてくるが、不快じゃない。
むしろあなたは、そこに自ら収まった。
彼をなだめようとして、なぜか信じてもらおうとも考える。
「ねえ⋯⋯だから大丈夫だよ。⋯⋯でも一応これだけ聞くけど、あなたの常識では、もし浮気したらどうなるの?」
別に自分達に当てはめたわけではなく、一般論として問う。彼の激しい反応から予備知識として知りたくなったのだ。
「浮気か。そうだな⋯⋯相手を殺す」
「えぇ!? 嘘でしょう? だって信頼してる人なのに!」
「番を取られそうになったら仕方がないことだ。他のオスは殺さないとな」
あっさりと言われて沈黙した。
獣のまっすぐな思考を甘く見ていたようだ。
「でも殺すって⋯そんなことしないでしょ。ルドガーは優しい人なんだから」
「ふっ。俺は優しくもないし人でもない。簡単に獣を信用するな」
殺気立ってる様子はなく、あなたの頬を撫でながら穏やかに言うが、まさか本当に殺したりしないよね、とあなたは焦っていく。
あんなにいい人そうでルドガーを思いやってる人を。
「まあいい。あいつに話を聞こう。これは大事なことだ」
「な、何するの? 恥ずかしいからやめてよ! あなたが勘違いしてるだけなのに!」
「これはオスとオスの話だ、。怖がるな、お前は選ぶだけでいい」
本当に何を考えてるのだろうと、やはり獣の思考は理解できないと知りあなたは動揺した。