第20章 任務編
すばしっこさに必死についていくも、狼はもっとも大きくジャンプをして飛びかかって来た。
小柄なあなたはしゃがみこみ右に避け、曲げた左腕を思い切り獣の脇腹に突き刺した。
そのときの感触は、異様に柔らかさを感じて、忘れられなかった。
「はあ、はあ、はあ」
あなたが一匹を仕留めたことに誰も気づいていない。
呼吸が激しくおさまらなかったが、距離のある獣をまた魔法を使い攻撃していった。
数分後、動く魔物の数が減っていった。
ルドガーも最後の一匹を倒し、皆は互いのところに集まってきた。
「……! 大丈夫か!」
「う、うん。平気平気」
彼の顔を見てほっとすると、腕の中に抱きしめられた。
「ルドガー……短剣で一匹仕留めたよ。やっちゃった……」
どう思われるのかと思いながら、緊張がとけない表情で見上げる。
するとルドガーは動揺することもなく、固く頷いた。
「ああ、よくやった。訓練の成果が出たな」
そう言われた瞬間、やってよかったことなのだと、急に実感がわいてきた。
鞘にしまった血の付いた短剣を取り出し、自分で見つめる。
攻撃魔法で倒した魔物もたくさんいたはずなのに、短剣で殺したものの場所は覚えていた。
あなたがそこに向かうと、ルドガーもついてきた。
しゃがみこみ、あなたはそれを撫でた。
いろんな感情がわいたが、心の中でお祈りをするしかなかった。
「ルドガーは、大丈夫? 怪我してない? ……ありがとう、何度も戦ってくれて」
あなたは自分が戦闘を行って初めて、ルドガーやナザル、セロに対し、戦うことの本当の意味がわずかだけ分かった気がした。
「俺は大丈夫だ。当然だ。俺達は皆互いのために戦ったんだからな。お前にもありがとうだぞ」
ルドガーはあなたの頭を優しく触り、瞳を柔らかくして言った。
あなたはその言葉を噛み締めて頷いていた。
そんな姿を、セロはじっと柄にもなく眺めていた。