第20章 任務編
「くそッ」
彼はそれを掴んだはずだが、手が黒いコウモリの体を通り抜けた。
「なっ……、避けろ!」
ナザルが叫ぶ前にルドガーもそれに手を突き出した。
だが彼のスピードに構わず一瞬消えたようにコウモリは避け、ぱたぱたとあなたの左肩に乗った。
顔より小さいぐらいの吸血獣である。
「、動くな⋯⋯っ」
ここに来て初めて弱弱しいルドガーの声が届き、あなたは微動だにできなかった。
左肩がずしっと重い。
なぜこんなことに。
この間の休暇中に、鳥が懐き頭に乗ったことを思い出したが、今は嬉しくないどころの騒ぎではない。
「や、やばい……どうしよう……噛まれたら終わりだよね…」
「おい喋るな、マジで」
「どうすんだよっ」
飄々としていたセロとナザルでさえも青ざめている。
ルドガーがゆっくり近づこうとしたら、そのコウモリは、グワッと恐ろしい牙を出した。
まるで「近づいたら噛むぞ」と脅しているように。
ルドガーは肩を激しく上下させ、金の瞳の瞳孔を反転させた。
喉の奥を獣の咆哮のように低く震わせ、相手を威嚇している。
三人とも彼の殺気で全身に怖気が走るものの、コウモリには通用してないようだ。
あなたは覚悟を決めた。
ゆっくりと、そのコウモリに向かって、片手を差し出したのだ。
「やめろ、……ッ」
ルドガーが一転して表情を崩し首を振ったが、このままでは根競べになってしまう。
「大丈夫だよ。……コウモリちゃーん、おいで~。肩から下りようね~……」
声を震わせないように試みると、コウモリは驚くべきことに、一歩ずつ歩き出した。
飛ぶでもなくリスのように四つ足で張って手の上に乗る。
そして重量のあるそれを、あなたは両手で支えた。