第19章 特訓編
あなたとルドガーは、その日も訓練に励んでいた。
騎士の訓練場の端を使わせてもらっていると、噂になったのか、立ち止まる人がぽつぽつと現れた。
「なんか見られちゃってるね〜。恥ずかしいな」
「お前はかなり上達したぞ。胸を張っていい」
「ふふっありがとう。ちょっとおトイレ行ってくるね」
首にタオルをかけ、本部棟にある手洗いへ向かう。
その間、一人の体格のいい男がルドガーに近づいてきた。
いつものチャラついた服装の、赤髪のナザルである。
彼は汗を流していた同じ獣のルドガーに、怪訝な顔で尋ねた。
「おい、お前よ。なんでそこまでするんだ? この短期間で、あいつが強くなる可能性なんてほとんどないだろ。お前が守ってやれば済む話じゃねえか」
ナザルはポケットに手をつっこみ、不思議そうに言う。
だがルドガーはタオルで黒髪を拭いながら、彼をまっすぐ見返した。
「俺はもちろんを守るぞ。だが、それでも自分の手が届かない瞬間は起こり得る。そのときのために、身の守り方を教えるのは必要なことだ。あいつは俺の、大切な番だからな」
そう話したあと、ルドガーは少し瞳を伏せた。
「そうすれば、俺の不安も少しは紛れるんだ。⋯⋯でもは、結構いい動きをしてると思わないか?」
彼は漏れ出た気持ちを隠すように、ナザルに珍しく穏やかに尋ねた。
ナザルは一瞬困惑し、言い淀む。
だが彼なりに真剣に考えた。
「⋯⋯ああ、そうだな。悪くはねえ。それどころか、セロより良いかもな」
「ハハっ」
獣同士、その瞬間は同じ話題で朗らかな空気が流れた。
この短い会話と、あなたとルドガーのまっすぐな姿は、ナザルの心にも少しばかり影響を残したようだ。