第2章 訪問客編
しかし彼が立ち上がり鼻を動かしてこちらへ向かってくると、他の七人ぐらいの男たちもついてきた。
確信を得た犬顔が棚を軽々と動かすと、怯えたあなたと目があった。
「きゃああぁぁッ!!」
あなたはワンピースをはいた尻で後ずさり、もう腰が抜けたように感じる。
男達は目を丸くしたあと、すぐにいやらしい目つきになった。
「へっへっへっ⋯⋯どうしてこんな所に人間のメスがいるんだ?」
「はははは、本当だぜ。あの野郎、どっからこの女を連れ込んできたんだ?」
下卑た笑いの波が生まれ、あなたは首をふってどうにか逃れようとする。
「やめて、殺さないで! あっちにいって!」
叫ぶものの男達は意に介さず腕組みをし、品定めをするように見下ろしている。
獰猛な獣の檻に突如放り込まれたかのような、恐怖と重圧に襲われた。
だが一番うしろから、虎顔の大男が彼らをかきわけてあなたの前に現れた。
彼は背を曲げて、じろじろと見てくる。凛々しい顔立ちながらルドガーの鋭い金の目とは違い、澄んだ青い瞳をしている。
「皆止めないか。かわいそうに怖がっているだろう。お嬢さん、なぜここにいるんだ? ルドガーの知り合いかい?」
「⋯⋯えっ。はい、そうです⋯⋯っ」
あなたは一番話が通じそうな虎獣人に相づちを打つ。
すると周りの男達はニヤニヤし始めた。
「てことはあれか。あいつは仕事中にお楽しみをしてたってわけか。堅物に見えてやっぱ獣だねえ」
「⋯⋯きゃあっ!」
酔っ払った他の獣人が手を伸ばしそうとしたため、あなたは叫んで避けようとした。
するとその手首を虎獣人が握る。
「やめろと言っているだろう。我々が触れたら人間は簡単に壊れてしまうぞ。とくに若い娘さんには優しくしろ。それに、ルドガーに殺されたいのか?」
「それは勘弁だけどなぁ。冗談だろう隊長さんよ。あんたも真面目なんだから」
周りは口々に喋り、隊長と呼ばれた虎獣人をからかうように笑い出す。
助けてくれた彼はため息をつき、あなたを違う場所に移動させることにした。