第2章 訪問客編
数日後、ルドガーは革服と重装備をまとい出発した。
前日からぴりぴりしていたし、きっと遠方で戦う仕事なのだろう。
あなたは応援しかできないが、彼の無事の帰還を祈って送り出した。
朝から晩まで、小屋でひとり待つ。
体が動けるので家事をしたり、本棚にある図鑑の絵だけ見て過ごしたりした。
丸時計の針は夜八時になり、そわそわする。
もうすぐかな。
そう思って窓から外の森を覗くと、足音と話し声が近づいてきた。
「ん⋯⋯? 誰かと喋ってる⋯?」
またお医者さんか誰かだろうか。
ルドガーが帰ってきたと一瞬心が弾むものの、じっと耳を澄ませた。
すると小屋の石扉がガタゴトと揺れる。
知らない男達の声もした。
「アァ? なんで鍵かかってんだ? おかしいな。いつも開けっ放しなのによ」
「ほんとだ、まあいいや。ブチ壊せ」
信じがたい台詞が聞こえてきて、あなたは即座に身の危険を感じる。
心臓が飛び出そうになりながら、居間の奥にある台所の棚裏に隠れた。
――嘘でしょ。誰? 盗賊?
恐怖にまみれて、本当にドアを力づくで開けた男の集団が押し入ってくる。
鎖はちぎれ床にガシャンと散らばった。
あなたはぞっとして口を自ら塞ぎながら、居間をのぞき見た。
そこでは人間じゃない男達が酒瓶やら、酒や食い物が入った箱やらを持って食卓を囲み始めている。
もう終わりだ。見つかったら殺される――。
泣きそうな目を見開き息をのんでいると、彼らは自由に乾杯し煙草を吸い、宴会を始めた。
しかし問題は、どう見ても彼らが獣人なのだ。
体つきは巨体のルドガーと大差なく、全員が胸囲も脚も太く大きい。
だが顔だけは犬に似た者もいるし、虎に似た者もいるし、服装は人間風だが獣なのだとわかった。
「おい。なんか匂わねえか?」
「ああ⋯⋯? なんの匂いだ?」
「メスの匂いがする」
そう言って立ち上がったのは、犬顔で牙と舌を出した大男だった。
あなたは背をすくめて震える。