第1章 出会い編
あれ、獣の誇りがある男に「手でしろ」は地雷だったかな?
そう思ったあなたはごまかすように引きつり笑いをする。
「⋯⋯俺がお前と交尾をしたいのは気に入ったからだ。誰でもいいわけじゃない。ましてやお前がいるのに手でするなんて⋯⋯正気か? お前は俺を馬鹿にしてるのか」
「してないってば! 自分だって失礼なこと言ってるって自覚しなよ!」
あなたは怒って彼の膝から退き、そのままベッドに転がり込んで布団にくるまった。
強く丸まってもう話したくないと意思表示をする。
彼が何歳なのかは知らないが、この尊大な男の前でなら子供っぽく思われたってかまわない。
そう思ってメラメラと燃えた。
ルドガーはそんな態度のあなたを絶対に放っておくタイプではない。むしろ感情豊かな者には惹かれ、ちょっかいをかけたくなるのだ。
「⋯⋯そう怒るな」
「触らないで」
「お前に触るなと言われたら、俺は堪える」
「⋯⋯そんなの知らない」
若干の罪悪感から反応が少し遅れたが、ルドガーは自分も布団に入ろうとしてきた。彼の太い腕に引っ張られたらこんな布すぐに剥がれてしまう。
あなたは仰向けになり、叱られた犬みたいに弱々しい目つきで見下ろしてくる彼を見つめた。
短く無造作にうねる黒髪に手をのばす。
自分の優位を示したくて、曲がり尖った黒角にも触れてみるが、彼は受け入れていた。
「ねえ。ルドガーって、なんの獣なの?」
「⋯⋯知りたいのか? 今度教えてやる」
「本当?」
「ああ」
あっさりと言われて、彼なりの譲歩を感じ取った。
きっとそう簡単な取引ではないと思ったからだ。
だからといって好きに交尾させるのは違う。
そこだけはしっかりしないと。
そう思うのだが、まるで本物の獣みたいに鼻を首に近づけられ、息を吸われるとびくりとした。
「なあ⋯⋯どんなふうにしたい? 教えてくれ、」
加えて一番甘く低い声で尋ねてくるから、どんどん気持ちが揺らいでくる。
少しぐらいなら、本音を言ってもいいかなと思い始めてしまう。