第12章 赤兎編
「まあまあ。子供じみた喧嘩すんなよ。こんな踏んだら死にそうな兎ひとつで。なあ、これどうすんだ? あんた持って帰るのか? 迷子みてえだし」
「俺達が持って帰ることはない」
「も~。わかったってば。ルドガーが嫌いなのは。……そうだなぁ、どうしよう。でもこんな小さくて、外で一人で生きていけないよねえ」
転がったままの兎を拾いあげ、あなたはルドガーの気持ちも考えて迷った。
するとセロが手を差し出す。
「俺にくれよ。食い物さえ持ってきてくれたら、世話してやるから。独房で一人はやっぱ少し寂しいからさ」
「……えっ。そうですよね。……いいんですか? じゃあお願いします!」
彼の思いがけぬ申し出に、あなたは感謝をした。
どうしてかこの兎が外の世界で心細く見えて、放っておけなかったのだ。
「お前、獣は嫌いだと思ったが」
「嫌いだよ。でもな、お前らの喧嘩のタネを排除してやろうという俺の優しさだろう。そのほうがお前も助かるんじゃないか? ん?」
まるで恩を着せるようにセロは小ずるい顔をする。
ルドガーは好意的な態度にはならなかったが、彼の好きにさせた。
そして三人とも、この無害な兎に関しては、別に許可を取るほどのことでもないと考えていた。
その後セロはこっそり服の中にいれて持ち帰ったのだった。