第10章 事件編
「おい、こいつじゃないのか!」
「その方ですよ。平凡な魔力量も想定の通りです。殺さないでくださいね、気絶するぐらいにとどめてください」
ただ一人落ち着いている師は、ジュリスとあなたに介抱されている若騎士を見下ろした。
床に沈みこみ、完全に脱力してしまっている。
「本当に術にかかりやすい体質の方ですね。どれどれ」
体に手をかざし、何かを調べているようだ。
「師匠、なにか分かりますか?」
「……いいえ。魔術師の魔力しか感じられません。あなたの守護者の力はなにも……」
術をかけられたばかりの新鮮な被験体から、残念そうに手を外し、彼は立ち上がった。
やはり守護者の直接的な情報は、そう簡単には得られないみたいだ。
気づけばルドガーが捕らえた若い男の魔術師も、気を失ってしまっている。
「さあ皆さん。領内に戻り、この男を尋問しましょうか」
彼自身としてはあまり収穫を感じられなかったのか、対象にはあまり興味のなさそうにミザロは言った。
「おい。もう一人はどうする。逃がすのか」
「周辺に怪しい者はいなかったが……」
ルドガーとジュリスが話し合うが、ミザロは落ち着いている。
「彼から情報を引き出せば十分ですよ。どうやら置いて逃げたようですし、今は放っておきましょう」
淡々と結論づけ、皆もひとまずそれを受け入れたのだった。