第10章 事件編
だからあなたは、すぐにジュリスにも通話をかけ、同じように伝えた。
彼は囮のターシャを挟むように向かい側で行動しており、背の高い同士ルドガーと目で合図をした。
「露天の近くへ行ってみよう」
「うんっ」
小声で話しながら、あなた達も隣の店で品物を見るフリをするが、店主は異国の風貌をした老人で、怪しいところはない。
あなたの催眠術によると、標的は若い魔術師とのことだったので、周囲に目を配った。
ターシャに近づいてくる不審者はおらず、そのあと彼は本屋に入った。
体格のよい健康的な男子の騎士は、読書家でもあり、中で本を選び、会計に向かった。
エプロンをした店員はニット帽から黒髪がのぞく、平凡な顔立ちだ。
少しやる気のなさそうな接客をしている。
「いらっしゃいませ〜。お兄さん、これちょっと角折れてるよ? いいの?」
「あっ、じゃあ代えてもらえますか」
「はいよ」
ごく普通の慣れた手つきで新しい本を取り出し、袋に詰めている。
あなたは他の客にも気をつけていた。
しかしルドガーが頭上から怪訝な声を出す。
「おい、あの店員……なにかぶつぶつ言ってないか? 微かにしか聞こえないが」
「えっ?」
あなたはエプロン姿の店員をじっと見る。すると確かに、紙袋を渡す前になにかを騎士に告げているように見えた。
しかもあのじとっとした陰鬱な目つきは、どこか師のミザロに重なったのだ。
「なんかおかしいかも、長くない?」
「ああ、行くぞ!」
思ったより早く飛び出してしまったルドガーは、二人のもとに向かっていく。獣の鼻が利いたのだろうか、どん!とカウンターを拳で叩いた。